「学習スタイル」の嘘

「人にはそれぞれ得意な学習スタイル(視覚優位、聴覚優位、体感覚優位など)があり、それに合わせた学習方法を提供するのが良い」という考え方が広まっていて、アメリカでは教育者の90%以上がそれを信じているようですが、反対に「この学習スタイルは本当は存在しない」という研究結果もたくさんあります。
TEDで話しているこの女性の話によると、「私は音で聞いて学習するのが好き」というような「好み」はあるが、だからといってその好みの方法で勉強した方が良い成績を残せるかといえば、そうでもないらしいのです。また、「音で聞きながら目でも見る」という感覚器官を複数使った学習方法の方が全体的に成績は上がったという結果もあると言っています。また、「もし、匂いをかいで学習するのが得意だという臭覚タイプというのがあったとして、臭覚を中心にして学習していると聞いたら、何か違うというのが分かるでしょう。」と説明しています。私たちが学習しているもののほとんどが抽象的なものなので、臭覚だけで学習するというのは無理です。この女性の主張は「存在しない学習スタイルを信じて、それを生徒別に使い分けようと教材を複数作ることが教師の負担になっている。」というものです。
英語の学習で「読み、聞き取り、書き、発話」という4つのカテゴリーがありますが、ここでも学習者の好みというのはあります。また、難易度というのもあります。一般的には「読み、聞き取り」の方が受け取るだけなので簡単で、「書き、発話」の方は発信作業なので難しいと思います。学習スタイルを考える時も、このような「好みと難易度」というのが関係しているような気がします。例えば、活字離れした読書嫌いにとっては人の話を聞く方が簡単ですし、じっと座っていられないADHD傾向のある人なら体を動かしながら学びたいと思うでしょう。
とはいえ、学習スタイルが嘘であったとしても、「見る、聞く、体を動かす」というスタイルを全て取り入れた学習方法を提供できれば、多くの人の好みに対応でき、ワンパターンになりがちな授業に変化をつけることができます。
また、意味のあるものを自分の経験に関連付けながら学習すると記憶に定着しやすいので、そのようなことを総合的に考えながら教材を作ると良いのではないでしょうか。