絵本の読み聞かせ方法 「何も足さずにただ読め」は本当か

絵本の読み聞かせをする時の方法論に、「すでに作品は完成されているから、何も足さずに(説明などを加えずに)ただ読め。」というものがあります。本当なのでしょうか。これは半分正しく、半分間違っていると言えます。
正しいといえる状況は、聞き手(子ども)がある程度大きくなっていて、挿絵からその他の状況が想像でき、さらに言葉になっていないもの(行間)を読み取る力がある場合だけです。
私たちは日々の生活を通して、五感を使って情報を脳内に蓄積しています。目から景色を、匂いから季節感を、音から状況を、味から自然を、肌触りから生活感を学習していて、それらを組み合わせて、より詳細な情報を取り入れています。そしてその経験に自分の感情が繋がって記憶されています。それらの自分の経験をもとに、人の状況をくみ取り、人の感情を推し量って共感することができています。そこに自分が居なくても、その出来事を自分が経験したのではなくても、さまざまなことを想像することができるのです。
小学生低学年ごろまでの小さな子どもで、まだ五感を使った経験を積んでいない場合、どんなに絵本がよく考えられていて絵がよく描かれていても、大人のようには内容を深く理解できません。物語に使われているヒントとなる物からイメージすることはできないし、行間を読み取れないし、主人公の気持ちを推し量ることができません。ですから、小さな子どもに絵本を読むときは、音を再現したり、主人公の気持ちを考えたりしながら、読み進める方が良いのです。ただ、毎回それをする必要は無いし、くどい説明を入れる必要もありません。絵本を主体にして、少しだけ付け加える程度で良いのです。
反対に、もう何度も読んでいるとか、大人が説明を加えない方が子どもにとって自由な発想を楽しめそうだとかいう場合は、何も足さずに静かに読んで余韻を味わいながら読み終わるのが良いと言えます。小学3年生にもなると、もう大人の説明が邪魔になるのではないでしょうか。小学4,5年生になると、国語の教科書にも「ごんぎつね」や戦争の悲しいお話が登場するようになります。
子どもの年齢にあった内容を、子どもの成長にあった読み方で読む必要があるのですね。そしてそれは、子どもの理解を助けたり、反対に邪魔にならないようにする、という配慮のさじ加減なのです。