黒人差別問題ーこれまでの運動と今回の運動の違い

2020年6月のBlack Lives Matterと呼ばれる黒人差別に反対する運動はこれまでにないほど大きく、記録的だとか歴史的だとか言われています。アメリカから始まって今や全世界に広がっているようです。なぜこんなに大きく広がったのか、思いつく理由を6つ挙げてみます。
1. 携帯カメラとSNSの存在
これまで以上に情報が録画され拡散されるようになりました。1960年代の公民権運動の時とは全く比べ物にならない情報通信の発達がこの運動を後押ししています。
2.COVID-19・夏休みによる時間の余裕
差別を受けている人達の多くは低い賃金で長時間働かなくてはならないことが多いため、これまでは仕事場を離れてデモに参加することが難しかったと思います。学生もまた同じで、学校があればそちらが優先となります。今回のデモはコロナウィルスによる自宅待機や6月からの夏休みが重なったため、より多くの人達が参加できていると言えます。
3.COVID-19による死亡率、失業率の差の可視化
コロナウィルスの罹患率、死亡率が数字で出ています。どちらも黒人(とヒスパニック)の割合が大変高く、その理由として、生活水準(衛生面)の低さ、オフィスワークでないサービス業に従事していることが多いことなどが挙げられています。家族の誰かがコロナウィルスにかかったとして、一人だけ隔離生活を送るなど、小さなアパートに住む人たちには無理です。失業率についても飲食業が多いことから黒人(とヒスパニック)の失業率が高いことが分かっています。これらの差が数字ではっきりと出て、生活格差、不平等が生き死にに関わるほど大きいということが可視化されたと思います。
4.COVID-19によるグローバルニュースの広がり
コロナウィルスが全世界の問題になり、多くの人々が世界のニュースを自分事として見ることを始めていた矢先の差別事件だったので、この差別問題が全世界のニュースとして受け止められたのではないでしょうか。
5. ダイバーシティ(多様化)
多様化の考えが広がり、男女差別、民族差別、ジェンダーマイノリティ差別など、あらゆる差別問題の根っこは同じなのだということを理解した人が多かったと思います。コロナウィルスの問題でアジア系の人々が差別され暴力を受けたというニュースもたくさんありました。
6. 大統領選直前という時期
11月のアメリカの大統領選を目の前にして、政治的課題を表面化させ具体的な解決案を出すのに良い時期だというのも今回のデモの広がりを後押ししていると言えます。次の選挙は絶対に失敗が許されないとアメリカ国民は考え、声を上げています。警察の予算を削減する案は具体的なものの一つです。間違いを犯す警察にあまりにも大きな特権が与えられ守られ過ぎている。その予算をホームレスや失業の問題に当てれば、町からホームレスを無くすことができるのにと言われています。それほど多くのお金が警察に回されているのです。
以上がアメリカに住む私が感じる今回の黒人差別反対運動の特徴です。