『トムソーヤの冒険』の中の黒人差別2

『トムソーヤの冒険』の中の黒人差別1 に続いて、黒人差別について見ていきます。
2.黒人をニガーと呼ぶ
もともと「黒」を意味するラテン語のnegroやフランス語のnègreが形を変えたもので、次第に差別的な意味合いを含むようになりました。1960年代まではまだ使われていましたが、今では絶対に使ってはいけない言葉と認識されています。万が一表記しなくてはいけない場合、n**ger、n*gg*r、n——のように文字を伏字にしたり、the N-wordと書いたりします。2007年2月28日には、ニューヨーク市でこの語を使用禁止にする条例が制定されています。(参考元:Wikipedia)
アメリカの小・中・高校では、教材が使用するにふさわしい内容であるか、または図書室に置いて問題ない図書であるかが議論されますが、その場合も必ずこの言葉に焦点が当てられます。『トムソーヤの冒険』の持つ問題が議論される場合も、たいていこの部分が中心です。また、使用したい場合には保護者にアンケートが届き、生徒に読ませて良いかどうかの承諾と、その場合の条件(なぜ差別的なのかを生徒に説明するなど)が署名付きの書類で確認されます。
(黒人同志で親しみを込めて使う場合があり、その場合は「友達」という意味合いで使われていると解釈します。そしてその場合、綴りはniggaになります。これも黒人でない人が使うのは絶対に許されません。)
黒人奴隷は名前で呼ばれることは少なかったのではないかと思います。「ニガー」としか呼ばれなかったんですね。第25章でトムとハックの会話にこのようなものがあります。
ヨーロッパの王様には名字がなく、名前は一つだという話の時です。
ハック:王様たちがそれで満足ならいいけど、でも俺は王様になんてなりたくないな。名前が一つだけなんて、黒(ニガー)みたいに。(引用元:『トム・ソーヤの冒険』柴田元幸訳、新潮文庫)
【引用部分】
Chapter 25
“Richard? What’s his other name?”
“He didn’t have any other name. Kings don’t have any but a given name.”
“No?”
“But they don’t.”
“Well, if they like it, Tom, all right; but I don’t want to be a king and have only just a given name, like a nigger. But say—where you going to dig first?”